「大人じゃないと遊べません・・LANCIA PHEDRA3.0 V6 24v」
このランチア・フェードラは完全なる乗用設計である。前述のジャンピィは、もともと乗用が商用転用された上でさらに簡易乗用となったものだが、このフェードラは、はなから乗用に設計されている。しかも「ランチア」流の「派手一歩手前」をこれでもかと見せてくれている。まるでブティックに入ったような異空間を見せてくれるのである。
室内、とくにそのダッシュボード周りは高級人工スウェードの「アルカンタラ」で覆われているし、肘が触る機会が多いドアトリムの上も、この「アルカンタラ」だ。先代のイプシロンもこのアルカンタラを上手く使って、いい雰囲気を醸しだしていたが、素材は日本製なのに、こうも上手くこの素材を使える車メーカーは、残念ながら日本にはないだろう。またシートのデザインが素晴らしい。さすがイス文化の国のクルマである。何とも言えぬ造形美である。ヘッドレストなどえてして安旅館の枕の様になりがちなデザインをなんとも存在感のあるデザインでまとめてある。さらにディテールにこだわりすぎずトータルで調和が計れているあたり、デザイナーの力量がしっかりしている証拠であろう。
3.0リッターV6に5段オートマチックの組み合わせは、Eセグメントのサルーンをも凌ぐ動力性能と走行性能。しかも機械をキカイキカイしたものと感じさせない配慮は流石である。このあたりも日本車では味わえない種類の喜びだと思う。
中も外もこのクルマは、無粋なコスト意識を排した享楽的な世界観を映し出そうとしている。それがテーマのごとく伝わってくる。ジャンピィの無駄なモノを極力排したそれとは対極にあるが、クルマとしての存在価値で、選ぶ側にその選択を任せているわけで、メーカーとしての懐の深さを感じずにはいられない。
近視眼的な利益追求主義や購買意欲を最優先に刺激する事ばかりを狙ったメーカーには到底つくる事ができないクルマである事は間違いない。
またこのクルマを受け入れる事ができる成熟した市場がある事もとっても羨ましい。大人が大人として見極めができるモノがあると言う事は、その国の成熟度を表しているのではないのだろうか。